彼氏の上手なつくりか譚
屋上に着くと、カイエンくんは既に来ていて、手には文庫本を持っていた。
「お待たせ!」
真奈が手を振ると、気づいたカイエンくんが開口一番、「遅い!」と言った。
「呼び出しておいて、待たせるなんてどういうつもりだ!」
ああ、怒ってる。そりゃそうか。私が日直だったことを忘れてて、日誌書いてたら放課後から30分も経ってしまったのだから。
「あれ? キミは……」文庫本を閉じたカイエンくんが私に気づいて、近寄ってきた。
「なんだ。88位の女じゃないか」
「88位は余計です! 私にはちゃんとした名前があって……」
と言おうとしたら、カイエンくんがそれを遮るように「わかってるさ」と言った。
「山田理沙さん、だろ?」