彼氏の上手なつくりか譚
屋上へ着くと、やっぱり例によって、文庫本を片手に持ったカイエンくんが待っていた。
「やあ、88位の女と他。よく来たな」
「……理沙、私も金属バット取りにいこうかしら」
他が指の骨を鳴らしながら言った。
でも、不要だ。こんな奴、私一人で十分だ。
「やいやい、このペテン師! よくも騙してくれたな!」
金属バットを振り上げ、迫ると、カイエンくんは「何の話だよ?」と半笑いで言った。
「とぼけんな! ケー番、嘘の番号教えたでしょ! 人の気も知らないで……」
「バカな。オレがそんなことするような人間に見えるのか? だったらその目は腐ってる。見てわからないような目ならくり抜いて、後アルミホイルでも貼っておけばいい」
「そんなことするような人間にしか見えないよ!」
むしろ、そういうことをするためだけに生まれてきたような人間にしか見えない。