彼氏の上手なつくりか譚





「あの! 私が! ……私が悲しみます!」


「……あなたが?」


「そうです! ヒトミさん、あなたが死んだら、私は悲しみますよ! だから、お願いです! 私にできることがあったら何でも言ってください! あ、自殺の手伝い以外で、ですよ?」


すると、しばらくの沈黙の後、電話越しに笑い声が聞こえてきた。


「ヒトミ……さん?」


「あ、ご、ごめんなさい。なんか嬉しくって……ごめんなさい」


「いえ、それで生きていく勇気になってくれれば、私も嬉しいです。どんどん笑ってください!」


「フッ……フフッ……」


ヒトミさんの笑い声は美しかった。まるで、子供のような純粋さがあって、聞いていると、こっちまで笑ってしまう、そんな笑い声だった。




< 391 / 525 >

この作品をシェア

pagetop