彼氏の上手なつくりか譚





一通り笑ったヒトミさんは、少し呼吸を整えて言った。


「山田さん、でしたよね?」


「はい、山田です」


「おかげさまで落ち着きました。あなたって人は本当にいい人ですね」


「そんなことないですよ。誰だって、死にたいなんて言われたら止めるのが普通ですよ!」


「そういうもんですかね。ごめんなさい、よくわからないんです。友達いないので……」


やっばい! せっかく立ち直ってくれたのにまた……!


「あ、いや、でも、もういます! 私が! だから、友達いないなんて、そんな寂しいこと言わないでください!」


「え?」ヒトミさんが少し間を置いた。


「山田さんが……私の……ですか?」


「はい! あ、もちろん、ご迷惑ではなければ……ですけど」


すると今度は、電話越しで泣き声が聞こえてきた。




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