彼氏の上手なつくりか譚
それからヒトミさんといろんな話をした。
ヒトミさんは20歳の大学生。
教師を目指しているけど、人前で話すことが苦手だということ。
そのせいで、小さい頃から友達ができなくて、いじめを経験したこともあること。
一人の時間が多くて、その時間をいつでも友達ができていいように、話題についていけるように、今周りで流行っているマンガやドラマ、音楽、ゲームなんかをお小遣いをはたいて買っていたこと。
最近では自分の性格を変えたくて、アルバイトをしてみようと、面接をいくつか受けてみたけど、どれも落ちてしまったこと。
どれも悲しい話、切ない話ばかりで、私は思わず泣きそうになってしまった。
私もなかなか地味な人生を送ってきたとは思うけど、こういう、絵に描いたような頑張りが空回りしたような人がいたなんて、上には上がいるんだ。
世の中には、きっとヒトミさんよりもつらい境遇の人だっているはずだ。
そう思うと、友達になってあげるただそれだけでいいのに、それだけで一つの命が助かるかもしれないのに、なんか、もう、何とも言えない、難しい、でも、それくらいのことで、それくらいのことがまた難しくて、何も言えない。