彼氏の上手なつくりか譚
「バイトの時間だから」と言って、コーダイくんは先に帰った。
帰り際、私に「姉ちゃんに何かしたら殺すからな?」とすごい剣幕で迫られて、気づいたけど、彼、どうやらシスコンらしい。
「ごめんなさいね。私の友達に……もうっ! 帰ったら許さないんだから!」
そう言って、胸の前で拳をパンパンとした早希さんだけど、死んだら悲しむ人、私の他にもう一人いるということがわかって、少し安心した。
「ってか、そもそも早希さんはどうして自殺なんて……」
聞いてからまずいと思い、口に手を当てたけど、言っちゃったもんは、もう返ってこない。
「実は……」早希さんがグラスに入ったオレンジメロンコーラに視線を落として言った。
「最近、大きな失恋をしまして……それが原因なんです」