彼氏の上手なつくりか譚
お昼休憩になって、真奈は「上川と食べるけど、理沙も来る?」と誘ってくれたけど、二人を邪魔するのは野暮だと思い、遠慮した。
それに、私にだってお弁当を作ってくれる人くらい、ちゃんといる。
「あ、理沙さーん! こっちです、こっち!」
保護者席から手を振る早希さんを見つけ、駆け寄った。
「お言葉に甘えて、来ちゃいました。まだ高校卒業して2年しか経ってないですけど、運動会、懐かしいですね……」
そう感慨深そうに言って、早希さんは水筒に入れたお茶を私にくれた。
「早希さんは足、速かったんですか?」
「もちろん、遅かったですよ。運動会って足が速い人ばかりが目立ちがちですが、極端に遅い人も目立ってしまうんです。私がそうでしたので……」
でも、早希さんは今こうして、綺麗で素敵な女子大生になっている。
とすると、足が速いって結局、社会に出るのに何の役にも立たない、ちょっと占いできますよとか、ちょっとマジックできますよとか、ちょっと霊感ありますよみたいな人と変わらないんだなって思って、余計、存在意義がないように思う。