彼氏の上手なつくりか譚
中越くんは、私の隣に座った。でも、目の前にはちゃんと早希さんがいる。
カップルでの正しい座り方って、隣同士じゃないくて、本当は相手の顔がしっかり見れる、向かい合う形なんじゃないかと思った。
「……何か注文しますか?」
「いや、いい。すぐ終わるから」
中越くんは表情を崩さず、冷たく言った。
……いや、冷たいんじゃなくて真剣なのかもしれない。
その証拠に、目はキリッとしていて、真面目さや誠実さも見える。
「早希」中越くんは「早希」と呼んだ。
「オレはキミとはもう会えない。だからこれで本当に最後になると思う。そう思って聞いてほしい」
中越くんのその言葉で、私は今すぐここから消えてしまいたくなった。空気になって、風に流されてしまいたかった。
でも、そうさせてくれない。動けない。凍ってしまったみたいだ。