彼氏の上手なつくりか譚
「で、キミはオレの連絡先が欲しいんだったな。いるのか?」
……まあ、欲しいのは欲しいけど、なんでこの人、こんなに上から目線なんだろう。
「まあ、欲しいのは欲しいですね」
「なら……」とカイエンくんがポケットに手を入れた。しかし、すぐに手を出した。
「なあ、黒マジック持ってないか?」
こいつ、また顔に書く気だ!
「わ、私の教えますから、大丈夫ですよ!」
「いや、オレが教える」
「また間違えられても困りますし……」
「バカ! オレがそんなヘマするか!」
したじゃないですか、2回も。
「とにかく、だ。口頭で言う。一度しか言わないから、ちゃんとメモしとけよ」
「わかりました」
カイエンくんはここでも容赦ない。普通、番号を口頭で伝える時は、区切って言うけど、カイエンくんは11桁、まるで円周率を唱えるみたいに、区切らずに言った。
「じゃあ、そういうことだから」
そう言って、カイエンくんはまた例の如く、手をひらひらさせて、屋上を出た。
あの人、多分、人に頭を下げたこととかないんだろうな……。