彼氏の上手なつくりか譚





家に帰って、あとはもう寝るだけの格好になってから、ベッドでうつ伏せになって、スマホを開いた。


電話帳に登録したばかりの「天野快延」の文字。その横にある受話器のマーク。


これに少し触れるだけで、私は離れた場所にいるカイエンくんと繋がれるのだ。


目に見えない電波という名の糸で、一瞬のうちに声が聴けるのだ。


もう私が生まれた時からそんなこと、当たり前になっていたけど、よくよく考えるとすごいことだなって思う。


例えば、私が今日の夕飯に食べた秋刀魚だってそうだ。


秋刀魚を捕まえる人、捕まえてきた秋刀魚を仕分けする人、それを梱包する人、スーパーまで運ぶ人、パックに詰める人、買ってきて料理をしたお母さん。


いろんな繋がりで、私の口の中に入ったのだ。


そう考えると、人ってつくづく一人にはなれない生き物だなって思う。




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