彼氏の上手なつくりか譚





「じゃあ、カイエンくんはウェイターに決まりですね」


「不本意だけどな」


「でも、モテるんだし、客寄せパンダには持って来いですよ!」


「別に売れてもいいことはないだろう? 汗水流して売ったチュロスの売り上げは、結局そのまま学校に行って、何かの募金に寄付するんだろうし」


そういえばそうだ。学校は売り上げを募金するなんて、毎年一言も言わずに、当たり前のように寄付をする。


そもそも、学園祭に来てくれる人は、たこ焼きを買うのだって、金魚すくいをするのだって、募金をするためにお金を払っているわけじゃない。


だから、そこには困っている人のために何とかしようという善意はまったくない。


「なんか、善意の意思もないのに、勝手に善意に変えられるのって、気持ちを踏みにじられたみたいで、あんまりいい気しないですね」


「確かにな。でも、それで困っている人が救われるなら、たとえ善意がなくてもいいんじゃないか?」


うーん、納得がいかない。


納得するには、今年こそ、そういう風に使われるってことを考えながらお金を使うようにするしかない。




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