彼氏の上手なつくりか譚
「実は私、困っていたんです」
「困っている? 何に?」
「去年までは学園祭、真奈と回っていたんです。でも、今年は真奈に彼氏ができたから、一人で回らなきゃいけないのかなって」
「そうなんだ」
ここで沈黙。ボールは今、私にある。
投げなきゃ……。
「だから、私でよかったら、その……一緒に回りませんか? 学園祭」
言えた。というか、言ってしまった。
別に「付き合ってください!」とかそういうことじゃないのに。そもそも、カイエンくんから誘われて、返事をしただけなのに。
姿見に写った私の顔は、ポッと赤くなっていた。特に耳が赤くて、熱くて、両手で顔を覆ってしまう。