彼氏の上手なつくりか譚
「よかった。いやあ、断られたらどうしようかと思った。でも、よかった」
スピーカーにした電話越しにフーッと大きなために気が聞こえた。
「でも、その気になれば、カイエンくんなら学園祭で回る人なんかすぐ見つかるんじゃないですか?」
「まあな。オレ、モテるし」
一度でいいから言ってみたい、そのセリフ。
そういうことを自分から恥ずかしげもなく言えるくせに、女の子一人誘うのに、どれだけ緊張しているんだろう……。
「でも、そういうことじゃないんだよ」
「……と言いますと?」
「誰でもいいってわけじゃないだろう? やっぱりこういうのは好きな奴と回りたいものだろう」
「確かにそうですね」
と言ってから、私の顔を覆っていた両手のうち、右手が自然と顎に向かった。