彼氏の上手なつくりか譚
だから、カイエンくんとああして、バッタリ出くわしても、気まずい思いは微塵もない。
あ、外車が走っている。あ、猫がいる。あ、カイエンくんがいる。そんな感じ。
でも、私のことを好きだと言ったカイエンくんはどうなんだろうとも思う。
私だったら、好きな人に好きって気持ちが知られたら、きっと顔から火が出るくらい恥ずかしくなって、その場から逃げ出してしまうかもしれない。
でも、あれからも毎日電話してるし、今みたいに学校の廊下でバッタリ出くわすこともあるけど、カイエンくんはいつもと変わらないカイエンくんだ。
ひょっとして、カイエンくんは好きって感情を知らないんじゃないかと思う。
そして、かく言う私も好きって感情を知らないのかもしれない。