彼氏の上手なつくりか譚
暗幕を画びょうで刺す親指が痛い。
思わず引っ込めて、指の腹を見ると、赤くなっていた。
あの夜、姿見に写った自分の耳と同じくらい、赤い。
「真奈、上川くんとまだ続いてるの?」
「急にどうしたの?」
私はわかりきったことを敢えて聞いた。今朝、真奈から上川くんの愚痴を聞いたばかりだった。
真奈もそこに違和感を持ったらしい。
「いや、愚痴る割に、別れないなってふと思ってさ」
「まあ、イラッとすることは多い……ってか、イラッとすることしかないわね。でも、別れることを考えたことはないわね」
「どうして?」
「そりゃあれよ! その……まあ、あんな奴でも意外といいところもあるっていうか、あいつには私がいないとダメっていうか、逆に私もあいつを必要としてるっていうか、そういう感じ」
真奈が顔を真っ赤にした。よっぽど上川くんのこと、好きなんだ。