彼氏の上手なつくりか譚
通話を終えたタイミングで、文芸部の部室のドアがガラガラ開いて、下村くんが出てきた。
「電話、大丈夫だった?」
「あ、うん」
「僕、これからここで店番なんだけど、山田さん、一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。私もこれから待ち合わせなんだ」
「そっか。それならよかった」
……沈黙。
この流れは、多分、バイバイなんだろうけど、私はどうもこのまま下村くんと別れることができなかった。
今、ここでバイバイしてしまったら、私は前に進めない。下村くんも前に進めない。
きっと、ずっと後になって、モヤモヤして、後悔するんだ。
隣に好きな人がいて、他の男のことを考える将来なんて、私は嫌だ。