彼氏の上手なつくりか譚
「正直、告白されるまでは、どうも思ってなかったんだけどね。でも、告白されて、意識し始めて、虫取りの時好きになって……。だから、上川くんとのことは本当に誤解なの。今更だけど、なんかモヤモヤしてたから……」
「そうだったんだ」下村くんがふーっと息をついた。
「あーあ、惜しいことしちゃったな」
「いや、むしろよかったかもよ? 私、そんなに大した女じゃないし」
「そんなことないよ。山田さんは素敵な人だよ。でも、これでよかったっていうのは、同感かな。こんなことで、すれ違うってことは、初めから付き合うべきじゃないって神様からのお告げだったんじゃないかな」
そうかもしれないって思った。
彼氏を作るには、好き同士だけじゃダメなんだ。運も大事で、タイミングも大事。単純なようで、実は複雑なものなのかもしれない。
「それに、あれがあったから僕は小説を自分で書きたいって思えたし、今すっごく楽しいから、きっとこれでよかったんだよ。山田さんもそうでしょ?」
「うん。私も今、すっごく楽しい」