彼氏の上手なつくりか譚
「二人に共通することは、聞き下手だってことなんだよね」と真奈がコロッケパンの袋をねじりながら言った。
「上川くんの場合は、自分のことを知ってもらいたいタイプ。下村くんの場合は、自分の趣味を理解してくれる人が現れた嬉しさを爆発させて、制御できないタイプ」
まさに、真奈の言う通りだ。
上川くんと通話をしている間、同時進行で下村くんからトークが来ていた。
モテ期ってこういうこと? とか初めははしゃいでいたけど、二人とも自分の話ばかりで、私の自身についての質問はなかった。
だから、私は二人のことはだいぶ知れたけど、私のことは二人とも何も知らないんじゃないかと思う。
次第にめんどくさくなって、眠くなって、二人の男子と話すという一生に一度訪れるか、訪れないかの機会なのに、ちっとも楽しくなかった。
むしろ苦痛だった。
私は確かに、おしゃべりな方じゃない。面白い冗談も言えない。
でも、だからと言って、聞くだけで満足するようなタイプでもない。
私だって、話したいこと、聞いてもらいたいことだってあった。
それは、面白いことじゃなくて、どっちかと言うと、愚痴に近いものだったけど、それでも話したかった。聞いてもらいたかった。
真奈が二人を彼氏候補から外した理由が、なんとなくわかった気がする。あれじゃ、モテない。