愛してるからこそ手放す恋もある
出逢い
あぁほんと今日は暖かい…

窓から射し込む陽射しは私を大きな天使の羽で包み込み抱きしめてくれる。

私は佐伯梨華29歳。
在籍は管理部総務課。主な仕事は廻監査である。
廻監査とはここ日本本社を含め、国内各支社の帳簿や勤怠等のチェックや、勤める社員が気持ち良く安心して働ける様に手助けを主とし、三年前から新たに儲けられた特殊な仕事だ。

眠い…
特にお昼を食べた後の書類の入力は眠い。

二足のわらじはやっぱり無理かな?
だからと言って本職の他にアルバイトやセカンド職を持ってる訳ではない。

ただ実家のレストランのバーを少し手伝ってるだけで、特に副収入は無い。
得て言えば、シェフである兄に頼んだらいつでも美味しいものを作ってくれると言うだけ。

「先ぱーい…」隣から情けない声を出す彼女は二年後輩の佐々木優華である。

「なに?」

「営業一課の課長のハンコ1ヶ所貰い忘れてて…」

一課の課長…?
あぁ、代理の坂下さんか?

私はパソコン画面から目を離す事なく「そう?じゃ、行ってらっしゃい!」と当然の返事を返す。

だが、「先ぱーい…お願いしますよ…」と泣きつかれてしまうから困ったものだ。

そして「後でコーヒー奢りなさいよ!」と突き放せない私にも問題があると思う。

「了解です!」と言う優華ちゃんの頭を受け取った書類で叩く。

もう!調子良いんだから!

さてさて眠気覚ましに行ってきますか!?

席を立ち管理部を後にする。




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