愛してるからこそ手放す恋もある
私の一日は6時にセットした目覚まし音で始まる。
ベットから出てカーテンを開ける。
「うーん今日も良い天気!」
着替えを済ませて階下に降りれば味噌汁の良い香りがする。
「お義姉さん、おはよぅ!」
「梨華ちゃんおはよぅ!体調は?」
心配するお義姉さんに右手親指を立てて「大丈夫」と言う。これが私とお義姉さんとの毎朝の挨拶。
そして、お義姉さんの作ってくれた朝食を美味しく頂いてると、突然額へ冷たい手が当てられる。
「キャッ!」
「熱は無いようだな!?」
「お兄ちゃん!!毎日毎日止めてよ!びっくりするでしょう!?」
寿命が縮むってば!
「可愛い妹の体調確認してるだけだろ?」
兄は父が亡くなってから、家族も店も自分が守ると言ってくれてる。そして私が病にかかってからは、今まで以上に過保護になった。
「もう子供じゃないんです!自分の体ぐらい自分で管理で・き・ま・す!そんなにシスコンだと、そのうちお義姉さんに逃げられるわよ!?」
「それこそ心配するな!?俺達は愛し合ってるからな!夕べだってな?」と兄はお義姉さんへ同意を求めた。
求められたお義姉さんは頬を赤らめ「うん…」と返事した。
朝から何っ言ってるんだ?このバカ兄夫婦!
付き合ってらんないわ!
さっさと食べて会社行こう!
「ご馳走さま!あっもう行かなきゃ!」
椅子を立ち上がる私へ「梨華ちゃん、忘れてる!」と、お義姉さんから茶色液体の入ったグラスが差し出される。
「あっ!」
差し出されたのはタモギダケのエキス。
親戚の叔父が"癌"に効くらしいと送ってくれる健康食品だ。病に効くかは分からないが、体調が良いのは確かだ。
「お義姉さんありがとう!」
グラスを受けとる私へ叱責の眼差しを向ける兄に「すいません」と謝り一気に飲み干す。