愛してるからこそ手放す恋もある
菱野部長の話はこうだ。

とても優秀な男が本社から送られてくる。その男の名前は小野田浩司34歳。菱野部長の元同僚で親友?

その男が必ずや日本本社(会社)を救ってくれるから、私に協力してほしい。と、言うこと?

「あの…お世話と仰いましたが?」

「うん。仕事面とプライベートもね?」

「プライベート…ですか?」

「うん。彼は、一人暮らしもながいし、一通りは出来るんだが、一度仕事のスイッチが入ると寝ることも食事することも忘れてしまうんだ。餓死寸前まで行ったんだよ?」

はぁ??餓死???
寝ることや食事することまで忘れるか??
一日、二日食べること忘れるほど、仕事に没頭しても…倒れるまでなるか?

生きてりゃ動かなくても、お腹空くし、自分で作らなくても方法は色々あるだろう?

今時、小さな子供や年寄りでもなきゃ、餓死なんてしないだろ?人里離れた山奥でない限り、デリバリーも、コンビニだってある。

「冗談のようで冗談じゃないよ?現に向こう(アメリカ)では何度か倒れて運ばれてるからね?」と菱野部長は苦笑する。

それってアホなんじゃないですか?

「あの…菱野部長に協力したいのは山々なのですが…私には無理かと思います。お休みの事もありますし…」

「君の事はある程度前任の木村さんから話は聞いてる。その上で君に頼みたい」

「木村部長からですか…?」

「木村さんには、仕事は勿論、君の事も託されたんだよ?嫁に出す父親だったね!あれは…」

菱野部長は当時を思い出してるのかクスクスと笑った。

木村部長が私を菱野部長へ託してくれた…?
木村部長が居なければ、私はここ居ない。
木村部長が居てくれたから…私は…

「彼がCOOとして着任しても月の半分は本社やら、アジア圏内を廻って殆ど居ないと思う。だから、きみも休みやすいと思うんだ?」

「そこまで仰ってくださるなら、協力させて頂きます」

「ありがとう!でも、もし結果が残念な事になっても、君がアメリカ本社へ行きたいと言えば受け入れてくれるから心配しなくて良いからね?」

「いえ、ダメだったらアメリカ本社(あっち)があるとか思いたく有りませんので、その話は聞かなかったことにしてください」

「そう?やっぱり君らしいね?」

「それで、いつ来日されますか?」

「もう来てるよ」

「ええっ!?」

「あっでもまだ口外しないでくれるかな?それと君は私の指示で動くから秘書課や、上層部への連絡はしなくていいからね?これはアメリカ本社の意向だと思ってもらって良い」




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