愛してるからこそ手放す恋もある
ここ監理部は大きな部屋に総務課、経理課、人事部、庶務課と、いくつもの課が集まってる。以前は個々の課毎に部屋が別れていたが、3年前からこの体制になっている。そして私と優華ちゃんは全ての課に関わっており、全てを統括してるのが菱野部長なのだ。
時折、他から声が掛かると、いつものほほんとしてる優華ちゃんが、「それは、経理!」「それは庶務!」だと振り分け、営業部からのレストランの予約についても、「直接お店に電話して下さい!」とあしらってくれる。
頼りになりますぜ!優華さん!
うちの会社は外資ではあるが、勤務時間は8時から17時となってる。これは創業以来変わってないらしい。そして17時に就業時間終了の合図であるエーデルワイスが奏でる。
「先輩私の方は終りましたけど、他に出来る事有りますか?」
「ありがとう!凄く助かった。お疲れ様!」
お先に失礼しますと帰る優華ちゃんを見送り、私はまた、パソコンへ向かう。
そして18時にもう一度奏でる二回目のエーデルワイスは残業申請が認められたものだけが、会社に残れる合図だ。
これも過度な残業を避けるためでもある。
だが、この日こそ、エーデルワイスが憎らしく思った日はない。
部署の扉が開き菱野部長が入って来た。
「お疲れ様」
「部長、もう少しお時間いただけませんか?」
「いや、君には大変な任務が有るからね?後はわたしが引き継ぐよ?」
「部長、佐々木さんも追い詰められればやれる子ですので、どんどん振ってやってください」
「ありがとう。佐伯さんの教育のお陰かな?じゃ、気を付けて」
お先に失礼しますと部屋を出た。