愛してるからこそ手放す恋もある
菱野部長に渡されたマンションの地図と現金20万、それからクレジットカードを鞄にいれ。

会社ロビーを出ると見覚えのある、丸いフォルムの白いフォルクスワーゲンが停まっている。

「お義姉さんお待たせ!ごめんね?」

「はい。着替え3日分しか持ってきてないけど良いの?」

「うん。週末には一度帰るから!それよりお兄ちゃん怒ってた?」

「まぁね…梨華ちゃんの事心配してるのよ?」

「うん。心配かけてるのは分かってる…でも…ごめん…」

「お義母さんも、あの人も、梨華は頑固だから反対しても無理だろうって言ってたわ!」

「そっかぁ…」

「でも、絶対に無理しないって約束して!病院も絶対行くって!」

「うん。約束する!」

これ以上心配かけれない。

「これはうちのひとから、ビーフシチューとサラダ、それとバケットね!」

「ありがとう!」

お義姉さんに持って来て貰った荷物を持って、会社の地下駐車場へと向かった。

地下駐車場に置いてあると言われた小野田さんの車の鍵。

「これって…」

鍵に印されたマーク。
車を見なくても分かる!
たっかいやつや!!

案の定駐車場には007の映画にも出てきたアストンマーティン…

兄が昔、一度は乗ってみたいと言っていたことを思い出す。

「お兄ちゃんが見たら羨ましがるだろうなぁ」

「やっぱり左ハンドルか…」

鍵を貰ったときから分かってはいたが、実際乗るとやっぱり緊張する。

エンジをかけ、これが良いエンジンの音かと感心し、ゆっくりゆっくり発進させる。




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