愛してるからこそ手放す恋もある
病室に戻ると、誠が待っていてくれた。
誠は機械と体を管で繋がれた私を見て心配そうな顔をする。
そんな誠を見て、堪えていた涙が溢れてきた。

「誠…」

私は誠の胸へと飛び込んで泣いた。

「痛いんか?」

痛くはない。ただ、誠の顔が見られてほっとしたのだ。
私は首を振り、ただ泣いた。

「…ごめん…ズッ…誠の…ズッ…顔見たら…ズッ…安心した…ズッ」

「俺の胸は梨華のもんさかい、好きなだけ泣いたら良い。このシャツもブランドの高いシャツやけど鼻水つけても怒らへんよ!気にせんでえぇさかい好きなだけ泣き?」

「もう!…ズッそんなこと言われたら…ズッ…泣けない!」

「そないか?」

「そないです!」

私達は顔を見合せて笑った。
これが今の誠にとって精一杯の慰めだったんだろう。

入院中は誠からの毎日何度も送られるLINEや電話で慰めてもらっていた。
数日掛けて抜いた水は病理監査へと回された。

その他にも血液検査に、レントゲンや、CTと、あらゆる検査をした。

そして出された診断結果は「癌」だと言われた。

医師からは子宮と卵巣が腫れている為、手術の予定が空き次第手術をすると言われたのだ。

手術…

今まで病気と言う病気といったら、風邪くらいしかない。勿論、入院もしたことない。ましてや手術などしたことない。

不安でおかしくなりそうだ。
そんな時顔を出してくれた誠は「心配ない。がんばろなぁ?」と手を握って勇気づけてくれた。

翌日手術を待つため15階の呼吸器内科から8階婦人科へと病棟を移った。




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