愛してるからこそ手放す恋もある

お客様をエントランスまで見送り、部屋へ戻る途中、声が掛かった。

「ねぇ佐伯さん?」

きつい臭いがすると思ったら秘書課の伊豆さんだ。

「はい、何か?」

「今夜の小野田さんの予定教えてくれない?」

はぁ?
なんのために?

「申し訳ありません。小野田さんから勝手に予定を公表するなと言われてますから…」

「そうなの?でもね、小野田さんの歓迎会ってやってないじゃない?私が幹事しようと思うんだけど、お好みも分からないから…だから、そのうちあわせをかねて、今夜お食事をね?」

「そうですか…」

「そうそう!だからね?」

「それでしたら…」

「うんうん!どう?」

「歓迎会は必要ないと伺っておりますので、必要ないかと?」

「もういい!あんたに頼んだ私がバカだった!」

これで何人目だろ?
小野田さんの気を引こうと私に伺いをかけてくるひと?
幹事とやらは何人居るのか…

そりゃー小野田さんは見栄えも良いし、
色々ハイスペックだと思う。
女性社員が狙うのは分かるが、
美貌だけで簡単に落とせる相手ではないと思う。
過去が過去だけに…
それを知ってるのは、菱野専務と私だけ…




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