愛してるからこそ手放す恋もある

私達がレストランに到着して30分が過ぎた。

「腹へった!梨華、先に食ってようぜ?」

先にって…

人の作るものは一切食べなかった人が…変われば変わるものだ。いまは私が用意するものは食べてくれているが、ここまでに至るまでには本当に大変だった。

「何言ってるんですか!?子供じゃないんですからね!大人しく待て下さい!じきにお見栄になるでしょうから!」

子供の様に駄々をコネだした小野田さんを叱責していた。その時、スタッフに案内されてM社の社長と、ドレスアップしたとても華麗な女性が入ってきた。

「やぁ待たせたね?娘の支度に手間取って、申し訳ない」

「いえ、私共こそ御時間を頂きましてありがとうございます。先達って御知らせさせて頂きました、当社のCOOに就任しましたこちらが小野田でございます」

私はM社社長へボスを紹介した。

「おぉ、君が小野田君かね?宜しく頼むよ!」

「初めまして此方こそ宜しくお願いします」

「実は娘に君と会うと言ったら、どうしても娘が君に会いたいと言ってね?」

傍らにいた女性は頬を赤らめ「やだ!お父様ったら…」と言い、美しさだけでなく、可愛らしさをも見せた。
モデルみたい…絵になる人ってこういう人のこと言うんだろうなぁ…ただ、香水の香りがキツイのが気になる。

いくら高価な香水を使っても、洋服と同じ様にTPOを考えなくては、ボスの言うようにスメル・ハラスメントになりかねない。

これから食事をしようと言う場に、これ程までの臭いをさせては、料理の香りを邪魔してしまう。

「本当だろ?時間に遅れたのも彼の為に着飾っていたからだろ?」

「もぅーお父様ったら…私、恥ずかしいですわ!あの…そちらの方は」

「申し遅れました。わたくし小野田の秘書をしております佐伯と申します」

「あら、秘書さん?随分お盛んな秘書さんなのね?」

はぁ?

「優秀な秘書なら、首もとのキスマークは隠すものよ?」
と、彼女は言い、薄笑いした。

あ…キスマーク…

なんで私がこんな辱しめ受けなきゃいけないのよ!?
これも全て(みんな)ボスのせいですからね!?
ボス!?




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