愛してるからこそ手放す恋もある

翌朝、電車に乗り社へ向かった。
10年ぶりに乗る、通勤ラッシュの電車はやっぱり好きじゃない。

もし、痴漢に間違われでもしたら…厄介なことになる。

冤罪の多いと言われるチカンは、間違えられただけで、地位も家族も失うことになりかねない。俺には家族はないが、やるべき仕事がある。もし、間違えられでもしたら大事になる。だから、両手を上げつり革を持つことにした。

「ちょっと次の駅で降りなさい!」

すぐ側で少しドスを効かした女性の声。

え?なに?チカンか?

辺りを見渡そうとすると見覚えのある女性。
昨日見た。うちの社員のあの佐伯だった。
その佐伯が俺の顔をみて、

「次の駅で降りて!!」と言った。

えっ!?
嘘だろ!?
俺がチカンに間違えられてるのか?
どうする…
このまま駅員室に付いていけば、まず、チカンと断定される。
だが、逃げたところで、彼女には直ぐに素性は知れる。
考えあぐねていると、駅に到着し、その駅で降りる人の波にのみ込まれ、気がつくと駅のホームにいた。

これは諦めろと言うことか?
後は弁護士に任せるしかないか…




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