愛してるからこそ手放す恋もある
「はぁ…」
ため息をついたとき、彼女は思いもよらない言葉を発した。
「生徒手帳出して!?」
??
生徒手帳…
彼女の傍らには女子高生が居たのだ。
え?
どういうこと!?
「こんなことであなたの一生をダメにしないで!欲しいものが有るなら、バイトでもして買いなさい!今回だけは見逃すけど、学校も名前も覚えたから、二度はないと、思いなさい!?」
彼女はそう言って女子高生へ手帳を返した。
え?
俺、関係無かったの?
「あなたも、おしりのポケットに財布を入れ満員電車に乗るなんて!いくら、日本が治安の良い国でもありえないでしょ!?」
そう言う彼女の手には見覚えのある長財布があった。
あっ…
「こういう平和ボケしてる大人が居るから、馬鹿なこと考える子供がいるのよ!?」
自分の尻に手を当て、間違いなく自分の財布だと確信する。
「お金をお尻に敷いてると、お金の神様に嫌われるわよ!?」
彼女はそう言って俺に財布を返し、次に来た電車に乗って行ってしまった。
あっ…
俺もその電車に乗るんだった。
礼も言ってないや…
まぁ良いっか…
直ぐに会えるだろ?
でもホント面白い女だな?
お金の神様に嫌われる。か…
この時は、彼女が俺の秘書になるとは知らなかった。そして、まさか彼女に対して部下以上の感情を持つとも思わなかった。