愛してるからこそ手放す恋もある
『ねぇ今朝見?同伴出社!』
『見た見た!』
『あっ俺も見た!』
『佐伯さんがCOOの弱味を握って一晩だけで良いからって迫ったって聞いた』
なんの根拠も無い噂話。
女性社員だけならまだしも男性社員まで…
呆れてため息しかでない。
『嘘だぁー』
『でも、それなら分かるんじゃない?いくら秘書課の美人嬢達が誘っても乗ってこないらしいし!』
『でも佐伯さんのどこが良いの?』
『一晩のつもりが、あまりの床上手だったとか?』
『マジか!?』
なんて下品な話…
ここ町の居酒屋じゃないよ?
会社だよ!
仕事帰りに居酒屋で仲間内で話すような話。
だめでしょ!?
『でもCOOに気に入らたれたら、ここがなくなっても本社へ移籍出来るんでしょ?』
『じゃ、佐伯さんに頼んで貰ったら?俺達も本社へ移籍出来るかも?』
『じゃ早速誘ってみるか?』
私にそんな力も、あなた達の言う床上手でもないし、手練手管なんて、私にはあなた達が期待するような手腕も無いです!
ここまで聞こえないだろうと思ってる彼等に教えてあげたい。
私の隣でボスが怒ってますよ!って
そして怒りが増していくボスを、これ以上放置も出来ず、一端退散することにした。
「ボス!やっぱり執務室で食べましょう?私、なにか買ってきます!」
今にも怒声をあげかねないボスの背中を押し、執務室へと戻って、私は昼食を買いに外へ出た。