愛してるからこそ手放す恋もある
「もしもしボ…」
『梨華!何故直ぐに出ない!?』
なんか凄く怒ってる?
「すいません…鞄の奥に入ってて鳴ってるの気がつかなくて…それより、何かありました?」
『昨日頼んでた資料、俺のパソコンに送られてないけど?』
あっしまった忘れてた…
資料作ったあと送信しようとした時に電話が入ってそのままにしてたんだ。
「すいません…直ぐ送ります」
『あっついでに俺の書斎の……』
「すいません…私、今名古屋に居まして…菱野専務にお願いして送りますので少し待ってもらえますか?」
ボスには、今まで、ボスの留守中は支店を回り従来の仕事をすると話していた。だから、私が休みを取り、入院して癌の治療をしてるなど知りもしないのだ。
『分かった。じゃ頼む!』
私は直ぐ菱野専務に電話をして、ボスのパソコンに資料を送って欲しいとお願いした。
『分かった。でも、良いのかい?君の部屋に入っても?』
「見られて困る物は有りませんから」
見られて困るのは下着くらいで、まさか菱野専務が私の下着を見たりする訳もない。
「パソコンは寝室のデスクの上に有りますので宜しくお願いします」
菱野専務にデーターの送信を引き受けて貰ったその旨をボスにメールで知らせ、後日大変な事になろうとは思いもせず、その後は安心して治療を受けた。