私を救ってくれたのは君でした。
私はワンピースを着た。動くとヒラヒラと舞うスカート。鶴谷くん、可愛いって言ってくれるかな?私はふふっとひとり微笑む。
カチューシャ、あんまり色合い的にあわないな、みつあみ、これは普通に合うな。これにしよ。私は久々に可愛いカッコをした気がした。
まるで、ついこの前までの自分とは別人のように。
でも、あれだな。この前まで病んでたからニキビとかあるんだよね。ま、まぁ、顔めっちゃ洗うか。

うぅん、あんまり目立たないよね?大丈夫だよね?よし、これでいっか。あともうひとつ、心配なことがある。
私は、ずっと自殺志願者だった。だから、人と関わるのをなるべく避けてきた。避けたいから、マスクをいつも付けている。昨日も、つけていった。けど、今日はつけていく訳にはいかない。
鶴谷くんに恥をかかせるわけにはいかない。私は思い切ってマスクを付けないという選択肢を選んだ。
少しでいい、少しずつ、前に進んで行ければいいんだ。
私は一階のリビングへ降りていった。そしてご飯を作る。いつも通りのはずなのに、なぜか心が弾む。楽しくて仕方がない。野菜を包丁で刻むのにリズムが生まれる。足が自然にステップを刻む。口角が上がっていく。

私はご飯を食べ終えると、時計をみた。

「九時……か……」

待ち合わせの時間は十時。あと一時間ある。どうしよう…暇。

「あ!」
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