私を救ってくれたのは君でした。
「ゆっくりでいい、話してくれ」

「ぅん……。あの日は、天気が良かった。
私は、今日こそは、と思ってとあるビルの屋上に行ったの。私は、飛び越えた、飛んだわ、最上階の屋上から。これで、死ねると思った、助かると思った。なのに、なのに、私は死ねなかったの。地面につくと思ったら、誰かに私は受け止められてしまった。それが、柏木さんとの最初の出会い。それで、私はショックのあまり、そこで気絶したらしいわ。
それで、目が覚めたらベットの上。起き上がったら、パイプ椅子に座って、私のベットに顔をつけて寝ている柏木さんがいたの。私がふふっ、と笑ったら柏木さんは目を覚ましたわ。そして、すぐに退院出来るわけもなく、カウンセリングや精神科医に色々と言われたわ。それがこれまた辛かった。トラウマのこともあってね。それで、刃物をみつけたの。それで、死んでやろうと思った。だから、それでリストカットした。
生暖かい血が、汗のようにダラダラと垂れた。収まることがなかった。ドクドクと流れる血。クパァっと開く傷口。震える手。どんどんと体が熱くなっていく。肉が出てくる。なぜかな、本能なんだろうか、私はリストカットした反対の手で必死に傷口を抑える。だけど、お構い無しに隙間から出てくる血。涙が流れてくる。目が濁っていくのがわかる。布団に、ポタポタと落ちる血。真っ赤な血が布団を彩っていくの。怖かった、今までのリストカットで一番怖かった。なぜだろうね。
そしたら、ガラって病室のドアが開いたの。私はそっちを向くことすら出来なかった。そしたらね、『雪希ちゃん、今処置するからね、安心して、お兄さんは誰にもバラしたりしないからね』って、柏木さんが来てくれたの」

「そう、なのか」
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