副社長は花嫁教育にご執心
問題のお寿司も提供し終え、私はすっかり油断して個室から出ようとしていたのだけど、灯也さんの言葉にびくっとして振り返る。
微笑んだ彼に手招きをされ、ちょうどご夫妻と向かい合うようにして、私も灯也さんと並んだ。
「本日、このご宴会を担当させていただいた野々原ですが、実は僕、彼女と結婚する予定なんです」
まさか、こんな形で紹介されるとは思わず、小心者の私は照れまくって縮こまった。しかし、ご夫妻はここでも素敵な方たちで。
「まぁ! とってもいいと思うわ。彼女ね、さっき私たち夫婦のの話を聞いて涙ぐんでいたのよ? 心が優しくって、可愛らしくって。最高のお嫁さんになること間違いなしよ」
ぱちんと手を合わせて、奥様が瞳を輝かせる。その隣で、会長も深く頷いた。
「そうだな。きっと私たちに負けない夫婦になる。何より灯也くん、きみの彼女を見る目が、大切なひとを見つけて、これから守っていかなければっていう、強さと輝きに満ちているよ」
「……ええ。ありがとうございます」