副社長は花嫁教育にご執心
丁寧に頭を下げる彼にならって、私も一緒にお辞儀をする。すると、俯いたせいかさっきご夫妻の話に感動したときと同じく、目の奥が再び熱くなってくるのを感じた。
や、やばい……また泣けてきた……。
だって、こんなに想い合っているご夫婦の金婚式のお祝いの席で、私たちの門出までお祝いしてもらえて……幸せになってねって、背中を押してもらえたようで。
こんなの、感動するなという方が無理でしょ……。
*
「いいよな、黒川会長も、奥様も。俺、けっこう理想の夫婦だ」
宴会の個室を出た後で、灯也さんがしみじみと呟いた。
「はい。でもどうやったらあんなに素敵な二人になれるんでしょうね……」
まだ、夫婦ですらない私たち。でも、できることなら目指すは彼らのようなおしどり夫婦だ。
「……まああなれるかどうかはわからないけどさ。俺たちは俺たちらしく、夫婦の形を築いていこう。二人で、足並みそろえてさ」
未来につながる前向きな言葉をもらい、私の胸にあたたかな光が灯った。
「はいっ」