副社長は花嫁教育にご執心


私たちらしい、夫婦の形。今はどんなものになるか想像がつかないけれど、だからこそ楽しみだ。金婚式を迎えたその時には、どんな夫婦になっているかな……。

ぼんやりと将来を思い描きつつ、ふと思い出して隣の彼を見た。

「そういえば、灯也さんってカラオケ上手なんですね」

「……え? うーん。まぁ、上手いかどうかは知らないけど、嫌いではないな。ちなみに、まつりは歌ヘタだよな」

意地悪っぽい笑みでばかにされ、ムッとする。

「し、失礼な。灯也さんにはまだ聞かせたことありませんけど」

「いやいや、歌ってたじゃん。あの時、風呂場でさ」

風呂場……? 一瞬首を傾げて、ああ!とすぐに思い当たった。もしかして、入浴シーンを覗かれたあの日のこと? そういえば、気分がよくてつい歌を口ずさんでいたかも……。

「へ、ヘタでした?」

「うん。リズム感ゼロだし、音程も外れてた」

「お、お恥ずかしい……自分では、全然下手なつもりなかったのに……」

「今度カラオケも特訓だな。まつりって、ホント色々教え甲斐ある」


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