副社長は花嫁教育にご執心
そういえばお父様と電話で話していたときも、彼は私を褒めてくれたんだっけ。それも、上っ面だけでなく、内面のことまで。
そうだよ……誰かに何か言われたからって、焦る必要なんか、なかったじゃない。
灯也さんは、きちんと私を見てくれている。それに私たちはもうれっきとした夫婦なんだから、周囲の意見何て気にせず、私たちのペースで進めばいいんだ。
「まぁ、まだまだ発展途上な部分もあるけどな」
灯也さんは最後にそんな言葉を付け足し、浮かれる私に釘を刺す。
「……はい。もうちょっと、頑張ります。料理とか、その他もろもろ」
「言ったな? よし、明日からまた特訓だ」
えっ。と固まる私を見て、くくっと喉を鳴らして笑う灯也さん。
こういう些細なやりとりひとつで、彼はいつも楽しそうだ。そんな彼を見ていると、私も自然と笑顔に戻る。
「さて、夜更かしが過ぎたな。もう寝よう」
「おやすみなさい、灯也さん」
「おやすみ、まつり」
最後にもう一度だけキスをして、私たちは目を閉じる。ウエストには灯也さんの腕が緩めに回され、軽くくっついたままの状態だ。
今の私はこれだけでドキドキするし、その時が自然にやってくるのを待とう。
いつか自分が心から、“灯也さんが欲しい”と思えるその日を――。