副社長は花嫁教育にご執心
「二人とも、なんでまつりに失礼なことばかり言うんだ。いつも結婚は自由にしていいと言っていたくせに。というかむしろせかしてただろ、結婚しろしろって」
反発する灯也さんに、ご両親は顔を見合わせてなぜかはははと笑いあった。
「いや、そうはいってもそれなりの家柄のお嬢さんを選ぶと思うだろう普通」
「それに灯也、学生の頃遊んでいた女の子たちはもうちょっと派手だったじゃない? それに比べたらまつりさんは……まぁその、質素なお顔立ちと言えばいいのかしらね?」
し、質素……。それだったらハッキリ地味と言ってください。
お母様の気遣いなのか嫌味なのかはかりかねる発言に、口の端が引きつった。
そして、もうちょっと派手な女の子たちというのは、杏奈さんや和香子さんのことだろうか。
そりゃまぁ、あの強烈な二人に比べたら地味かもしれないけどさ……。
卑屈になる私の横で、灯也さんは美しい顔を歪め反論する。
「……普通とか知るか。いくら親であろうと俺の選んだ嫁に、文句は言わせない。あと、派手な女友達がいたのは確かだけど、別に彼女たちと付き合ったりはしていない。何より俺が、心底こいつに惚れてるんだ。もしどうしてもまつりのことが気に食わないんなら、親子の縁を切ってもらっても構わない。設楽の名は捨てて、自分で会社を立ち上げる」