副社長は花嫁教育にご執心
「大変だなまつり。今度からケーキの練習もしないといけないから」
ご両親と別れ、近くのパーキングに停めてあった彼の車に向かう途中、灯也さんが悪戯っぽく口角を上げた。
「うっ……。あの、灯也さんの誕生日っていつでしたっけ? それまでには、何とか……」
「俺の誕生日は四月だけど……それより前に、クリスマスってものがあるだろ。二十五日は一緒に休みだったはずだから、俺も準備手伝えるし」」
クリスマス……? そういえばもうすぐだっけ。私はひいふうみい、と指を追って、サッと青ざめた。
「そ、そんなのもうあと三日じゃないですか! 無理ですよ!」
「……あれ、もうそんなだっけか。忙しくて忘れてたな。まぁできなきゃできないでいいよ。まつりの負担になるなら、ケーキは買えばいい」
ううう……そう言われると、こっちも意地になってきてしまう。
「な、なんとか練習してみます。いきなりお母様のようには無理でしょうけど」
「ほんとか? 無理はしなくていいけど、でも……作ってくれるなら、正直かなりうれしい」
わぁ、そんな無邪気な笑顔向けられたら、困っちゃいます。こりゃ、失敗できないぞ……。