副社長は花嫁教育にご執心


そんなことを考えていると、いまだ手の中にある私のスマホが鳴った。

誰かから連絡が来ることなんてほぼないので、久々の着信音にびっくりしてしまう。

私に電話してくるのなんて、今まさに頭に浮かんでいた遊太くらいなものだろう。だとしても、こんな夜ふけにどうしたんだろう。

「ごめんなさい、ちょっと電話出ますね」

上半身を起こし、灯也さんに断りながら改めて画面を見た私は、首を捻った。

表示されている名前が、遊太ではない。かなり久しぶりに目にしたその人物の名前に、間違い電話じゃないかと思いつつ、スマホを耳に当てる。

「もしもし、……佐助?」

『久しぶり、まつり。こんな遅くにごめんな。今電話平気か?』

声を聞いただけで懐かしさがこみ上げ、私は一瞬高校時代に戻ったような感覚に陥った。

足立佐助(あだちさすけ)。それが、電話の向こうの彼の名だ。高校時代の同級生で、とても仲の良かった友達のひとり。

「うん。ホント、久しぶり……どうしたの?」

『いや、実は俺、今東京に帰ってきてるんだ。で、時間あったら会えないかなーと思って』


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