副社長は花嫁教育にご執心
あの頃は、まだ私よりも背が小さかった遊太。私は高校生だったけど遊太はまだ中学生だったし、きっと悲しみとか寂しさとかも私より強く感じてるんだろうって思っていた。
でも、私の話を聞いていた佐助は、私が思っていたのとは違うことを言ったんだ。
「本当は、まつりが泣きたくないから、避けてるんじゃねーの? おじさんとおばさんの話」
「え?」
「つーかまつり、ちゃんと泣いた? 遊太くんのこともあって姉さんぶってるのかもしれないけど、無理に強がってるとお前がいつか壊れるぞ」
佐助の言葉を聞いて、私は喉の奥にせりあがってくるものを感じた。
いつもぐっと飲み下していたそれが、とうとう泣き声となってこぼれ出す。
「……ううう、ほんと、は、私だって……泣きたいけど……っ」
それでもなかなか思い切り泣かない私を、佐助はまるでけしかけるようにぽんぽんと優しく撫でて。
そのぬくもりに、私はもう我慢ができなくなって。
「いいんだって。ほら、ここならお前は姉ちゃんでも何でもないんだから、思う存分泣け」
「佐、助……うわああああああああん」