副社長は花嫁教育にご執心
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……そう、あの時。両親が亡くなって、その悲しみにすらちゃんと向き合えていなかった私を一番支えてくれた友達が、佐助だった。
姉として弟の前で強がっていた私を誰より先に見抜いて、佐助は思う存分私を泣かせてくれた。そのおかげで、悲しみから立ち直るのも早かったように思う。
そんなわけで、佐助にはあの頃たくさん泣き顔を見せてしまったから、今でも私のイメージがそのままなんだろう。
「あの時は、本当にありがとね。でも、もう心配してもらわなくても大丈夫。私も大人になったんだから」
『ホントか? まぁ、元気ならそれが一番だけど。あ、そういえば、知り合いにまつりの働いてるとこの割引券をもらってさ。明日行こうと思うんだけど、お前いる?』
「うん。昼以降なら基本ずっといるよ」
明日、佐助来るんだ。本当に久々だから、どんな大人になってるんだかワクワクする。最近は仕事に行くのがちょっと憂鬱だったんだけど、明日はそれを励みに頑張れそう。
『じゃー顔見に行くわ。レストランだよな?』
「そう。椿庵って名前の和食屋さん。割引券使って入るなら、料理はお高いの頼んでよね」
『はは、ちゃっかりしてんなぁ。了解。じゃあ、明日』
「うん、おやすみ」