副社長は花嫁教育にご執心


「うわ、わかりやすっ。……そうか。いるんだ、彼氏」

佐助はぼんやり宙を見ながら呟いた。

「彼氏……というか、夫、かな。ついこないだ、結婚して……」

持っていた丸盆で顔半分を隠しつつ、昨日は言えなかった結婚報告をする。

すると佐助は椅子がガタっと鳴るほどのリアクションで驚愕し、それからちょっと寂しそうな笑顔になった。

そ、そんなにびっくりしなくても……。

「なんだ。そういうことは早く言えよ。おめでとうまつり。相手、いいひと?」

「ありがとう。……私にはもったいなすぎるくらいのひと」

佐助には、いつか本人をちゃんと紹介したいな。今日は、彼が本社に出かけているから無理だけど。

「くそー、のろけやがって。ま、幸せそうなら俺も安心だ。そういや、そろそろ仕事戻んなくて平気?」

「あ、そだね。怒られちゃうから、そろそろ行く」

「頑張れよ。仕事も、家庭もな」

「うん! ありがとう」

懐かしい友達からのエールに励まされ、足取りも軽く仕事に戻る。

その日は特に大きなミスもなく、久々に充実感を覚えながら仕事を終えた。


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