副社長は花嫁教育にご執心


「あの、今じゃなくていいんですけど、ちょっとお話が……」

「うん? わかった。帰ったらゆっくり聞く」

「お願いします」

今夜はゆっくり話せることが決まり、とりあえずホッとした。

彼を見送ってから、あまり食欲はなかったけれど灯也さんがせっかく作ってくれた朝食を時間をかけて完食した。

それからノロノロと自分も出勤の準備を済ませ、さて家を出よう……というときになって、突然体調に異変が起きた。

「なんだろ、頭痛い……」

こめかみが急にずきずきと痛み出し、その場所に手を添えて痛みに耐える。

原因はわからないけれど、頭痛くらいで休むわけにもいかないし……。

そう思いながら玄関で靴を履いたのはいいけれど、どうしてか足が動かなかった。

なんで? 遅刻するよ? まつり。ほら、早く行かなきゃ。

そう思うのに、体がまったく付いてこない。

「なにこれ……」

五~六分ほどそのままの状態が続き、次第に頭痛だけでなく吐き気まで催してきた。


< 152 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop