副社長は花嫁教育にご執心
帰宅するなり、玄関の扉の音を聞きつけたまつりがリビングからぱたぱたと駆けてきて、「おかえりなさい」と出迎えてくれる。
しかし、普段なら可愛らしいと感じるその行動すら、浮気の罪滅ぼしか?と俺はひねくれたとらえ方をしてしまった。
俺は彼女に返事をしてやらずに、シャワー浴びてくるとだけ告げて、バスルームへこもった。
頭上から降り注ぐ熱いシャワーが、この狂おしいほどの嫉妬を洗い流してくれやしないかと期待したものの、あまり効果はなかった。
悶々としたまま髪や体を洗い終わり、シャワーの湯を止めたところで、脱衣場の方からまつりの声がした。
しかし彼女のセリフは、さっき携帯に送られてきたメッセージとほぼ同じ、俺を苛立たせる“いいわけ”にしか聞こえない。
なぁ、まつり……俺に見せていた笑顔は嘘だったのか? 顔を赤くして照れている顔も、切なそうに俺を見つめる瞳も。
俺は、てっきり勘違いしていたよ。
お前が、俺に本気で恋をしてくれたんじゃないかって――。