副社長は花嫁教育にご執心
でも彼女は、まつりが一番信頼していた同僚だ。そんな彼女が、まつりを貶めるようなことをするだろうか。
しかし、俺の脳内に、あの男が“まつりの初恋”だと印象付けたのは、ほかでもない彼女で……。
……藤田久美。彼女がカギを握っていると、俺の直感が告げていた。
まつりは浮気なんかしていない。冷静になればわかることなのに、俺はなんてことをしてしまったんだろう。
俺の手できっと真実を明らかにして、彼女にきちんと謝ろう。そうしたら、俺たちまだやり直せるよな?
夫婦って、そんな簡単に壊れるものじゃないよな?
時に傷つけあってしまうこともあるけど、心の深いところで強い絆が結ばれている……そんな、上っ面だけでない夫婦に、俺はなりたいんだ。ほかでもない、お前と。
ぼんやりとだが真実に近づいたことで、胸に一筋の光が差したような気がした。
張り詰めていた神経もようやく落ち着き、同時に眠気に襲われた。
本当はもっと推理を進めたかったが、精神的な疲労とアルコールのせいもあり、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。