副社長は花嫁教育にご執心

過去より未来を



ひと晩、涙を枯らすほど泣いた私は、決心した。

めそめそしてばかりじゃダメだ。彼の態度が変わるのを待つんじゃなくて、自分から何か行動しなきゃ、きっと状況は変わらない。

昨夜、灯也さんがあんなに怒ったのは、私のことを見放していない証拠だって、前向きにとらえたい。

というか、誤解ひとつで灯也さんとの仲が壊れてしまうなんて、絶対に嫌……!

散々泣いたし一睡もできなかったけれど、八時ごろベッドから抜け出した私は冷たい水で何度も顔を洗い、ひどい顔をメイクで誤魔化した。

リビングを覗いたら、灯也さんはまだ眠っていた。彼は今日休みのはずだからゆっくり寝かせてあげることにして、私は小さく「いってきます」と呟いた。

静かにリビングの扉を閉め、玄関に向かう足取りが今日はしっかりとしていた。

向かう先は職場だけれど、仕事をするわけじゃないし、昨日とは心境が違うために、頭痛や吐き気には襲われずに済んだ。

出勤日ではないのになぜ職場へ向かっているのかというと、自分の中に芽吹いた疑惑をハッキリさせるためだ。


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