副社長は花嫁教育にご執心
「支配人がいつまでもポーカーフェイスなのがむかついたんで、今日だってずる休みして彼と会ってるみたいですよーって言っときました。その時は、支配人あの子が休んでるの知らなかったみたいで、びっくりしてました」
「へえ。じゃあ昨夜は帰った後夫婦喧嘩かねえ」
「いい気味ですよ。あの子、私よりレベルの低い短大出てるくせして、妙にお客さんに受けがいいからって店長からの評価が私より上で、ずっと気に入らなかったんです。それでも女子力だけは勝ってるって思ってたのに、あんないい男に見初められて、どんどん綺麗になってくのが、ほんっっと憎たらしくて」
……そんな。そんな理由で? そんな、くだらない理由で、私を……。
怒りと悲しみと、彼女への強い軽蔑が、私の拳を震わせる。
久美ちゃんの本心をすべて知った私は、すうっと息を吸い込んでから、ロッカー室のドアを開けた。
パッとこちらを見た二人分の瞳が、そろってあちこちに泳ぐ。
「そういうことだったんだね。全然気が付かなかったよ、久美ちゃん……」
私は今回の件、そして今までのミスの件、すべての首謀者に向かって言った。