副社長は花嫁教育にご執心
「何とでも言えば? でも、私がまつりちゃんに何かしたって証拠はないの。くれぐれも上に言おうなんて馬鹿なこと考えないでよね? まぁそうじゃなきゃ、全部私がやりましたなんて、認めるわけないよね」
証拠がない……? そうか、オーダーミスなどの嫌がらせは、そもそも私の担当番号になっているから誰が犯人かなんてわかりはしない。
でも、あの中傷の手紙は……?
そこまで考えて、ハッと気が付く。久美ちゃんが、あれをびりびりに破いていたことを。
「あの、ひどい事が書いてあった手紙も……証拠隠滅のために破いたの?」
「あ、わかっちゃった? あの破片はもう捨てたし、どこかの焼却場で灰になってると思うけど」
「どうして、そこまで……」
「だから言ったでしょ? 女の嫉妬は怖いんだよ」
私が知っている今までの久美ちゃんからでは考えられない、どすの効いた声で脅される。
真実はわかったけれど、私にはこれ以上彼女に対抗する術がない。
悔しいけれど、ここはもう引き下がるしか……。そう、諦めかけた時だった。
「……なるほどね。あなたのしたこと、よくわかりましたよ。藤田久美さん」
私の背後から、信じられない人物の声が。
振り向いた先には、スマホを片手にしたり顔をする灯也さんの姿。