副社長は花嫁教育にご執心
テーブルの上のどんぶりを覗かれ、なぜか恥ずかしくなった。
ひとりなら、SNS映えなんか気にしないもんねと強気でいられたけど、支配人に見られるとなると話は別だ。
こいつ、食事のチョイスすら女子力まったくないじゃん……なーんて思われているに違いない。彼が来るとわかってたら、もっとこう、野菜が多かったり彩りのいいものを選んだのに。
食事のことをこれ以上突っ込まれたくなくて、私は話をそらす。
「すみません、考えごとしてて、皆さんにご迷惑を……」
「考えごと? あ、まさか、結婚のこと、ご家族に反対されたりしたのか?」
「いえっ! それは全然で、むしろ家族としては一日でも早く結婚してほしいような状況で……」
両手を振って、説明してしまってからあれ?と固まる。
私、流れに任せて言いにくいと思ってたはずのこと、ぶちまけてない?
冷や汗がたらりと背中を伝ったけど、支配人は「なんだ」と安堵したように表情を緩めた。
「そらなら話が早い。近いうちにご両親に挨拶したいから、その旨伝えてもらえるか? そっちの予定に合わせてスケジュールを調整する」
あ、そっか……。支配人は私の家族が特殊だって、知らないもんね。それにしても、すぐに挨拶したいだなんて、支配人はどうしてそんなに結婚を急ぎたいんだろう。
前々からせかされてるとは言ってたけど、それだけでこうも焦るもの? まったく、御曹司の考えることはよくわからない。