副社長は花嫁教育にご執心
後悔を滲ませ、懺悔するように語る灯也さんに、心が切なく揺れる。
私は、大丈夫なのに。むしろ、私が拒絶してしまったことで、あなたの方が傷ついたんじゃないかって、あのあとずっと心配だった。
「私も、ごめんなさい……佐助の胸で泣いたこと、それだけは本当のことだから」
久美ちゃんのついた嘘の中で、それだけは真実。けれど、特別な意味なんて何もないんだって、わかってほしい。
「ああ……。あとは、昔、彼が支えだった、というのも本当だろ?」
「……はい」
「そこだけは、どうあがいても太刀打ちできないのが悔しいよ。時間を戻さない限り、高校生のまつりを俺が助けてやることはできないから」
「灯也さん……」
そこまで言ってもらえるだけで、私は幸せです。出会う前のことまで気に掛けてくれる優しい人が旦那様だなんて、きっと天国の両親も喜んでいるはずだ。
あたたかい感動に浸りながら、私はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「過去は変えられませんけど、未来は変えられます。私の未来は、灯也さんとの思い出でいっぱいにしてください」
結婚生活も、恋も、まだ始まったばかりだもの。ひとつひとつ、思い出を重ねるの。
そのどれもがきっと、振り返った時には愛しい記憶になっているはずだから。
そんな思いで彼に微笑みかければ、灯也さんは感情の昂りを抑えきれなくなったかのような表情で、私を強く抱きすくめた。